初期の大型家庭電化製品は頑丈だけが取り柄だった。それゆえ、耐久消費財と呼ばれた。しかし、普及率が高まり、新規の需要が期待できなくなると、メーカは、消費需要を開拓するために、買い換えを促す戦術にでた。つまり、次々に目新しい機能や特徴を備えた新製品を出し続け、消費者の購買意欲をそそろうとした。
だがこの作戦は、常に新しいものを開発し続けなければならないという代償を伴った。そこでメーカーがとったもう一つの作戦は、ある程度の時期を経ると製品自体が故障して、消費者が買い換えざるを得ないようにするという姑息な手段だった。摩耗したり劣化したりする部品をわざと組み込んで、数年で故障するようにし向けた。
ところが、製造技術が向上し、部品素材の研究や力学構造の研究が進むにつれて、壊れやすい製品というもの自体が作りにくくなってきた。さらに、家電内部の電子化が進み、部品点数も少なくなってきたため、壊れやすい製品はますます作りにくくなってきた。
そこで、メーカーがとった最終手段は、家電内部に秘密のタイマーをもち、一定の時間が経過すると、特定の回路を作動させて、製品を壊すという方法だった。それは、自身の製造日から7年~12年程度のランダムな期限を設定して、タイマーで日時を監視し、Xデーが来ると、自爆するというものだ。どうせランダムなので、タイマー精度は低くてもよく、消費者に時刻をセットさせる必要がないので、悟られる心配もない。今や、耐久消費財は、耐久自爆財へと変貌を遂げた。
さて、2000年に至ると、これらの秘密タイマーは00年からカウントアップを始めてしまう。したがって、99年の10年後に自爆するようにセットされたタイマーは、決して109年に至らない。秘密タイマーは、ひたすら自分の「壊れどき」をはかり続けるだけで、永久に自爆すべきXデーを刻まない。メーカーは事実上、半永久的に故障しない製品を送り出してしまったのである。
リサイクル法(※)の施行を間近に控え、寿命の長い製品は、これまで以上に市場から歓迎されるだろう。メーカーが自爆タイマーの問題に気づいたのは、ごく最近である。過去10年以内に世に送り出された、壊れない大型家電は、まさにリサイクル法の施行にターゲットを併せたかのように、寿命の長い優良品として賞賛をあびるだろう。メーカーは悔し紛れに、「100年使える冷蔵庫!」などと、間抜けなTVコマーシャルを流し始める。
ここにいたって、メーカーはようやく、本来の企業努力に立ち戻る。すなわち、日々研究・開発を積み重ね、新しい機能や特徴を備えた製品を出さなければならなくなった。次なる作戦は、本棚や勉強机に転用できる冷蔵庫だの、水槽や植木鉢にも使えるテレビなどといった、小手先では済まされない。モノを作るからモノを生かすという、本質的な企業理念の転換が求められるのである。
※ リサイクル法:冷蔵庫、テレビなどの大型の家電製品を破棄する場合、メーカー・流通業者に回収とリサイクル処理を義務づけ、そのための費用負担を消費者に義務づけたもの。2001年より施行される。
コメント