データー・情報・知識・知恵の違い

情報の種類

価値ある情報を識別するには、情報をその種類によって分類し、それぞれについて価値を判断する必要があります。形態や属性による分類、内容による分類、発生源や出所による分類、用途や適用業務による分類など、視点や分類方法はまちまちですが、おおよそ、以下のように分けられると思います。

A.データー

データーは、事象を定量的に表したものであり、多くは数字などの値そのものです。汎用機やクライアント/サーバなどの既存システム上には、データーやファイルの形で情報が格納されています。これらは、そのままでは値の集まり過ぎず、得てして扱いづらく、大抵は量も膨大なので、そのまま利用者に提供しても活用できません。しかし、全ての情報の元になるものは、常にデーターですから、正確性や網羅性などについては、細心の注意を払って管理する必要があります。

B.情報

単体のデーターだけでは、利用者にとってあまり利用価値がありません。けれども基礎になるいくつかのデーターが組み合わされ、グラフや表になれば、意味のある「情報」となり、利用者それぞれの立場や業務にとっての価値を持つようになります。顧客コードの「UVW123、XYZ456…」という単純なデーターはあまり意味を持ちませんが、

コード 顧客 前月取引高
UVW123 ACB商事 2,000万円
XYZ123 DEF物産 5,000万円
::

という組み合わせになると違ってきます。営業担当者にとっては、今年の販売見込を考える根拠になりますし、経理担当者にとっては、資金繰りの検討材料になります。管理部門は与信評価をするかもしれませんし、企画担当者はマーケティング・プランを練るときに使うかもしれません。

このように、一つだけは価値が少ないデーターも、組み合わされて、社内の業務それぞれにとっての意味が明確になれば、バリューチェーンのどの局面で誰に提供すべきかを定義できます。こういった、目的を持って整理加工され意味を伝えるものが、ビジネスにおける情報なのです。

企業の中には多くの種類の情報があります。また、一つの情報も、整理・加工・分析・評価といった使われ方によって、様々に異なる意味を持ちます。情報システムで情報を交換したり共有する際に、どのような情報がどのような業務や担当者にとって必要であるかを見極めて、ビジネスシナリオを描くことが重要であるというのは、こうした理由からです。

C.知識

情報と知識との違いは、混乱しやすいものです。情報は、それ自体が価値を持っているわけではありません。情報を参照し利用する人が、そこに価値を見つけだし、業務成果の価値を高めて行くのです。しかし知識は、初めからある目的に添った価値をもっています。

知識は、目的に即した価値をもっていますから、価値を生み出すための直接的な材料になります。業務知識や専門知識はそれぞれの業務や専門的なあらゆる仕事において、助けとなるものです。またセールスマニュアルや見積もりサンプルなどのように、ある分野の業務について、必要な知識を整理・体系化したものもあります。知識は、あらかじめ想定された局面において活用されることが求められ、まさに「その時、知っている」ことによって、価値を何倍にも高めるものです。

情報システムは、「タイムリーな情報を必要な人にタイムリーにとどける」ことが得意です。必要な人にタイムリーに届けられた情報は、目的に即した価値を持ち、知識として活用されます。つまり、情報システムは、情報を知識として活用できる仕組みだといえるのです。

D.知恵

知恵は、行動を伴った実践的な知識です。「おばあちゃんの知恵袋」などを思い浮かべて下さい。知恵はどれも、知っているだけではなく、実際に社会生活や日常生活において活かしてこそ意味があるものばかりだと気が付くはずです。

ビジネスにおける知恵もまったく同じです。営業戦略の立案方法、顧客情報を分析するコツなどは、行動を起こしたときに使われて、初めて価値を持つものです。しばしば「ビジネスリテラシ」などといわれるものの多くも、ビジネス行動における知恵だといえます。論理的な思考方法、文書作成技術、物事に対処する手順や、作業のコツ等々は、理屈がいくらわかっていても、実践を伴わなければ単なる知識です。この「単なる知識」というところに、知恵の正体があります。

知識をシナリオ化して、必要な知識の組み合わせを網羅できれば、それは知恵となります。社内業務プロセスを定義して、情報や処理をビジネスシナリオにまとめるということは、すなわち、情報や知識を社内全員が共有・実践し得る知恵にまで昇華させることに他ならないのです。

情報システムはもちろん、情報を交換したり共有するための仕組みとして優れています。しかしそれ以上に、多くの知識をシナリオ化した知恵として共有できる点にこそ注目し、大いに活用すべきです。

コメント