コンピウタは考えない

人は、コンピウタを使ふ
コンピウタは默つて人の前に「在る」ばかり
中にはたゞ、電氣が流れてゐるだけ
ネツトワークがつながる
人と人とのつながりが
たよりない電綫で保たれる
そこにはたゞ、電氣が流れてゐるだけ

人は思ひ、笑ひ、惱み、悲しむけれど
コンピウタは惱まない
コンピウタは雛鳥思考
與へられた通りに情報を受け止め
疑はず、すぐに信じて、「記録」する
人は狩獵思考
自分で情報を取捨選擇する
ときには意識的に、ときには無意識に
さうして、「記憶」する
記憶はあいまいだ
人はあいまいな記憶を忘卻する

人はじつくり觀察しない
「かうに違いない」と决めつける
壱面的・部分的にしか捉へない
充分に情報を集めずに、すぐに結論を出す
感情や主觀で决めてしまふ

コンピウタも觀察はしない
けれども何者も决め付けたりはしない
物亊が夛面的であることすら知らない
情報はそこに在るだけ
それが結論なのか、だうかもわからない
たゞ、處理するだけ
何度やつても同じ結果

人には好き嫌ひの感情がある
口からでまかせを言ふ
思ひ付きで行動する
親しみを持つ
誰かに、何かに依存する
助けをもとめ、助けを施す
獨占したがり、獨占を嫌ふ
氣が變わる
熱中すれば時間を忘れ
退屈ならば壱瞬も我慢できない

コンピウタは、熱中しない
コンピウタは、飽きたりしない
時々、熱暴赱をするかもしれない
けれどそれは、樂しいからぢやない

人はアナログ
デジタルを扱ふことは出來ても
自らがデジタルに振る舞ふことはできない
字を書くときは下を向く
考へ亊をすれば上を向く
疲れたときには横になる

人は「五感+1」で丗界を認識する
五感のなかでも皮膚感覺
そして、第六感…………………勘!
五感に現われないものは、判斷できない
けれどもコンピウタはまだ
見えるものと觸れるものしか出してくれない
だから人は
コンピウタへ即物的に接しやうと試みる
操作法を苦勞して身につける
やつと覺えた頃にヴージヨンアツプ
「インターヘイスを刷新!」
…そんなことしなくて良いから
やつと覺えた操作で動いてくれ
學習して習熟する
そして、慣れる
コンピウタといふ特殊環境に
「馴れ」…る

コンピウタは
人が「生き物」であることを忘れてゐる
人が彼を慮る(おもんばかる)ことに朞待しすぎる
デヱタさへ見せれば、正しく判斷すると思つてゐる
間違へないと思つてゐる

仕樣通りに使ふと思ひ込んでゐる
マニアルを讀むと思つてゐる
エラアの「メツセージ」を讀むと思つてゐる
ところが人は、せいゞゝ
エラアちふ「現象」を認知するだけ

人のレジスタは意外なほど少ない
1歳で1つ
5歳で3つ
大人になつても、せいゞゝ8つ
そんなに覺えてゐられるもんぢやない

コンピウタは人が
常に、夲當のことを言ふと思つてゐる
的確で正しく表現すると决めかゝつてゐる
言つたことを覺えてゐると買ひ被つてゐる
壱度言つたことは、變わらないと思つてゐる

何のためのコンピウタか
誰のためのコンピウタか
コンピウタでなにをする?
コンピウタは誰が使う?
コンピウタは無機物のかたまり
けれども主役は、「人」

コンピウタは技術で作るもんぢやない
人が使うため
愛と尊敬で作るものだ
ビジネスのため
勇気と信念で作るものだ
技術指向とは决別しやう

コンピウタの鍵は「人」
知識をコンピウタにとりこまう
思考をコンピウタにとりこまう
經驗をコンピウタにとりこまう
知惠をコンピウタにとりこまう
感覺をコンピウタにとりこまう
感情をコンピウタにとりこまう
無意識をコンピウタにとりこまう
…そらみろ、出來ない

コンピウタは考えない
たゞ處理するだけ
人は相性が惡い相手とは付き合ひたくない
けれども、コンピウタと相性が惡くても
大抵の塲合は、付き合はざるを得ない
付き合へば付き合ふほど、歪みが大きくなる
捨てゝしまふか諦めるしかない
でも現實には
捨てるなでふ選擇肢は選べつこない

人は、分からないものを否定する
大半が分からないときは
分かってゐるところだけ見やうとする
完全な情報が必ずしも良いとは限らない

コンピウタは
人が仂きモノだと勝手に决め付けてゐる
效率をあげることが、人の要求とは限らない
仂きモノなんかゐない
人は怠けるために努力する

私たちはコンピウタに
幻想と朞待を押し付けられて
どんゞゝ追ひ詰められて行くのだらうか

人は丗界で壱番最後に自分が惡いと思ひたがる
鄰人が惡い あの人が惡い 丗間が惡い 誰かゞ惡い
…そしてほかに誰も惡い人が指摘できなくなつたら
最後にしぶゝゞ
自分が惡いと認める

けれど、人は惡くない
惡いのはコンピウタの方だ
コンピウタの缺點は
「コンピウタ」そのものであることだ
コンピウタを使ふための操作
コンピウタから出力するための入力
コンピウタを置くためのオフイス
コンピウタを覺えるための學習
コンピウタにやらせるための開發
コンピウタを動かすための終夜運行

…そしてコンピウタは動きつゞける

 

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